地産地消とは?
地産地消とは「地域で生産された農林水産物を、その地域で消費する活動」のことです。
「地域生産」と「地域消費」をつなげた略語です。
- 農産物:野菜や果実、お米など
- 家畜農産物:肉や乳製品など
- 水産物:魚介類、海藻類など
- 林産物:木材、チップなど
地産地消と6次産業の関係
これまでは、それぞれの産業内完結し、農林業者は生産まで、それを加工するのは加工業者、売るのは販売元と役割分担されていました。
それに対して6次産業は生産者である農林漁業者が加工から販売までを一括して行うのです。これにより農閑期や漁閑期は加工や販売業務にあたれるなど、所得が向上したり、地域内での新たな雇用を産むきっかけとなります。
また、野菜や果実のような新鮮な商品だけでなく、傷モノを利用してジャム・漬物といった加工品も開発すれば、生産物を無駄なく活用することができます。
地元産の商品バリエーションが広がることは、地産地消をサポートしたい消費者にとってもうれしいポイントです!
このように、6次産業は地産地消とも深いかかわりを持つ活動だといえます。
【地産地消の事例①】直売所・道の駅
直売所(農産物直売所)とは販売場所周辺でつくられた農産物・加工品を中心に扱う店舗です。
生産者自身、もしくは農業組合のような団体が運営している場合が多く見られます。
道の駅とは、道路沿いに建てられた大型施設のこと。
従来は主にドライバーに向けた休憩場所のような存在でしたが、今では地域振興を目的に、農産物直売所や飲食店・温泉といったスペースを設けるところが増えています。
どちらの場合も、地産地消を意識した商品ラインナップで、その土地でしか味わえない個性あふれる農産物に出会える点が特徴です。
【地産地消の事例②】スーパーなどの量販店
スーパー・量販店のような大規模なお店=同品質の商品を扱う場所、というイメージを持つ方も多くいるかもしれません。
近年は、地産地消に取り組むスーパー・量販店も増えていますが、実際はどのような状況なのでしょうか。
通常、スーパーには国内外からの商品が並び、そのほとんどが卸市場・企業から仕入れた商品です。
【地産地消の事例③】給食
子どもの食育は、成長期の身体の健康状態を保つために最も重要な取り組みのひとつです。
中でも、大半の子どもたちが多くの時間を過ごす学校での「給食の質」が大切な要素となります。
学校給食の食材は、主に卸市場や青果店から調理場へ運ばれます。
地域によって異なりますが、主な給食の調理法は以下の2つです。
- センター式
複数の学校の給食を共同調理場で作って配送 - 自校式
学校の校舎内にある調理場で、1つもしくは複数の給食を作る
センター式は、複数校の献立をまとめて決められ一度に調理できる点がメリットです。
自校式の場合、少量ロットで食材を仕入れするため、小規模の生産者との連携が取りやすい場合があります。
このような状況を踏まえて、現状と課題を見ていきましょう。
メリット|地域農業の活性化が期待できる
2007年に制定された学校給食法では、給食の中に地産物を取り入れるよう推進しています。
学校給食は配給量が多いため、地産地消に取り組む自治体の中には「全体の〇%以上を地元産」「特定の素材は地元産を優先」といった形で取り組みを行っている場合があります。
また、愛媛県今治市や、千葉県いすみ市のように、一部の素材を地元のオーガニック素材に切り替える自治体も増えており、より子どもの健康に配慮した取り組みも進んできました。
生産者と給食センター・栄養士といった、さまざまな立場の人が地域ぐるみで取り組み、学校給食における地元素材の安定した供給を目指すことで、農業の活性化へつながるメリットも見られます。
デメリット|安定した供給量の確保が課題
気候や農林水産物の生産量などは、地域によってさまざまです。
そのため、品目の豊富さや安定した供給量の確保が課題となっています。
また、子どもたちが口にする農産物は、すでに調理を終えた形で現れるため、どのように「地元産であることの大切さ」をアピールするかもポイント。
口頭での説明や文字情報だけでは、おそらくほとんどの子どもたちにとって印象が薄いでしょう。
給食そのものへの取組にとどまらず、授業や校外学習を通して地域の農林水産物を見学したり、収穫を一緒に体験したりと、別のアプローチを併せることが求められます。
地産地消の事例④】福祉施設
障害を抱える人々が集まる福祉施設では、学校と同様の給食だけでなく、障碍者の支援を目的として、地産地消と深いかかわりと持つ取り組みが見られます。
たとえば、福祉施設と地産地消の両方にかかわる取り組みとして、神奈川県横浜の福祉施設・けやき荘では、施設のそばで農園を開いています。
地元の人々に農園を利用してもらいながら作物を育て、収穫後はけやき荘の入所者に給食として提供。
ほかにも交流イベントを開くなど、地域の人々に楽しんでもらいながら、地産地消にもとづいた食料の生産に取り組んでいます。
また、障害者の人々の自立支援のために、直売所を設けるといった事例も増えています。
岐阜県中津川の社会福祉法人たんぽぽ福祉会では、2014年に産地直売所をオープン。
以降、喫茶店や食堂・加工工場を開設し、すべての場所で障害を抱える人々の雇用機会をつくっています。
農場での生産から販売まで、あらゆる場面で地域に貢献しながら、障碍者の自立支援も担っている例です。
【地産地消の事例⑤】観光(グリーンツーリズム)
通常の観光では、訪問先の名所を中心に見て回り、町の飲食店や宿泊施設を利用することで、その地の食べものや特産品に触れることができますよね。
しかし近年は、より「文化体験」の面に力を入れたグリーンツーリズムの人気が高まっています。
都市部の在住者が、実際に生産の様子を知り、体験することで、普段の暮らしの中で口にする食べものについて学ぶ機会になります。
またグリーンツーリズムを通して、在住者側にとってもその地域の魅力を再発見できることがあり、新たな地産地消のアイディアにつながることもあるのです。
観光客やインバウンドの獲得にもつながる。
もともとヨーロッパのモデルを参考にしてきたグリーンツーリズム。
地産地消の活動が推進される中、グリーンツーリズムでは「地域振興」「地域支援」に視点をおいて展開されています。
お客さんのターゲット層は、主に都市部に住む人々や、海外からの観光客。
都市部の人々と農村部に住む人々の交流を深め、その地域の魅力を知ってもらうことで観光業につなげる、という考え方です。
日本でグリーンツーリズムの考え方を広めた先駆者のひとり・山崎光博氏によると、
- あるがままの自然の中でのツーリズムであること
- サービスの主体が、農家などそこにいる人々の手によること
- 農村の持つ様々な自然,生活・文化的なストックを都市住民と農村住民との交流を通して活かしながら、地域社会の活力の維持に貢献するということ
このうち、特に日本のグリーンツーリズムは3番目の要素が強く、ここを軸に展開している、と主張しています。
ヨーロッパでは、農家個人の支援を重視している一方で、日本のグリーンツーリズムは地域全体の支援と活性化がポイントなのです。
実際に日本では、農家や生産者の敷地内で食事・宿泊できるケースは少なく、大半が「農業体験と宿泊施設は別」といった形に。
地域全体を巻き込むためにも、ひとつの場所に留まるのではなく、移動をしながら地域を広く見てもらおう、という意図が強く込められています。